『プラン9・フロム・アウタースペース』『エド・ウッド』
何のためらいもなく「駄作」だと言い切ることの出来る映画というのは、実はそれほど多くないように思う。僕には理解できないだけで、全く新しい映像文法が使われているのではないか。「つまらない映画を見た」と感じたときはいつもそんな思いが頭をよぎる。『俺たちに明日はない』を、あるいは『勝手にしやがれ』をばっさり切り捨てた批評家と同じ轍は踏みたくないものである。自分で言うのも何だが、僕は結構ずるい人間だ。
そこでエド・ウッド監督『プラン9・フロム・アウタースペース』である。「史上最低の映画」という宣伝文句に釣られて見たわけだが、つまらなすぎて逆に面白いのではという僕の期待は見事に裏切られ、本当につまらなかった。
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ここまでなら「シュールレアリスムの映画か?」と(強引に)考えられなくもないが、モンスター役のトー・ジョンソンが墓穴から出てくるシーン、身体が大きすぎて墓穴から出てこられずもがいているカットを平気で採用しているのを見て「ああ、適当なんだな」と納得。同時に、ティム・バートンやデヴィッド・リンチ、それにタランティーノがエド・ウッドのファンだというのも何となくわかる気がした。
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B級映画を取り巻く製作環境をユーモアたっぷりに描いたこの作品。わずかな予算、厳しい製作スケジュール、口出しをするスポンサー。これを見ればエド・ウッドの映画がつまらないのも仕方ないと思えるように……なんてことは全然なくて、むしろ彼のいい加減さ、スタッフのはっちゃけぶりが強く印象付けられた。エド・ウッドの映画よりも、エド・ウッド本人の方がずっと面白い。
映画は『プラン9』が完成した時点で終わっているが、実際はその後が大変だった。プロデューサは完成したフィルムを持って営業に回るが買い手がつかない。プロデューサは疲労のあまり死んでしまう。奥さんはエドと別れた途端に作詞家として成功する。エド・ウッド本人もアルコール中毒で死んでしまう。死屍累々というか、一本のZ級映画はかくも大きな代償を必要とするのか、みたいな。