『暗殺者の家』

暗殺者の家 [DVD]

暗殺者の家 [DVD]

少し前に『知りすぎていた男』を観たけれど、そのリメイク元がこの作品。ただし現代はどちらも「The man who knew too much」。なんで邦題を統一しなかったのだろう。あと何で過去形なんだろう。
映画の冒頭は、何冊かの観光ガイド本が広げられた机のクローズアップで始まる。『泥棒成金』のときと同じように、本に描かれた情景と地名で話の舞台を紹介する。『知りすぎていた男』のときはモロッコだったが、こちらはスイスが冒頭の舞台。主人公は暗殺された諜報員から秘密を託され、敵組織はそれが警察に伝わらないよう、主人公の娘を誘拐して脅迫の材料にする。そしてイギリスに戻った主人公は、単独で敵組織のアジトを探し出そうとする……という大まかな流れはリメイク版と同じ。1時間半ほどで完結する話なので、若干すっきりしたかな。
ただ、後半のコンサートホールから敵のアジトでのアクションについては、リメイク版の方が優れている。この場面については「シンバルが鳴ったら暗殺者が銃を発射する」という情報が前もって与えられていて、それをいかに引き伸ばすかが重要となる。しかし、カメラはおろおろするヒロインの顔を映すばかりで、肝心のシンバル奏者を映そうとしない。リメイク版では途中で主人公がかけつけることでさらに引き伸ばされるのだけど、それもない。フィックス主体の画面構成は緊張感があっていいのだけど。
それと、敵アジトを警察が取り囲む終盤の場面。そろそろと警察官が近づいていくと、突然敵アジトから銃弾が発射され、警察官がばたりと倒れる。このシーンでカメラはぐっと下がって、警察官が豆粒のようになる。もっとも興奮するシーンでカメラを引き、それまでは極力クローズアップで構成するといういつものやり方は成功している、と思う。ただ、そこでせっかく盛り上がったのに、警察官が武器庫にいって、銃を取り出して、ひとりひとりに配って、アジトを包囲して・・・とやっている間に冷めてしまう。明らかに無駄なシーン。ここは非常に残念だった。
そんなところかな。淀川先生の「名作クラシック100選」にも入っているけれど、もっといい作品があると思うんだけどなぁ……。少なくとも、この作品よりもリメイク版の方が優れている。