日本史

ナラトロジー文献「本多勝一とジャーナリズム―報道を書く―」

今回も某所で報告した際のレジュメを転載。

柳田國男『遠野物語』

遠野物語―付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫)作者: 柳田国男出版社/メーカー: 角川学芸出版発売日: 2004/05/26メディア: 文庫購入: 15人 クリック: 110回この商品を含むブログ (101件) を見る柳田民俗学(特にその初期作品)に対する「よくある批判」として…

近代日本における統治権力の浸透過程について

ガルブレイスの「不確実性の時代」で、第二次大戦を経験した人はそれが時代を変えた分水嶺だと思いたがるけれど、社会的な観点から見れば第一次世界大戦において決定的な変化が起こったのだと言っているが、まったくその通りだと思う。日本社会においては「…

近世在地社会における教養について

徳川吉宗が設置した目安箱について、室鳩巣がこんなことを書いている。「百姓名主の子に学問これ有る者」の投書が、「漢文にて調い候て、御勘定頭などよめかね」「御奉行以下読み得申す者これ無く」、つまり学問のある百姓の出した投書が見事な漢文で書かれ…

萱野稔人『国家とはなにか』

『国家とはなにか』作者: 萱野稔人出版社/メーカー: 以文社発売日: 2005/06/17メディア: 単行本購入: 12人 クリック: 142回この商品を含むブログ (118件) を見る整合性のとれた美しい論理で書かれた、これから国家を語る上で必読と言える一冊である。ただ、…

日本精神治療小史‐京都・岩倉村を題材に‐

近代の世界史をきわめて巨視的に捉えるならば、西ヨーロッパ発の産業革命・市民革命が世界的な広がりを見せ、全世界が資本主義・国民国家という均一のシステムに覆われる過程である、ということが出来るだろう。もちろん事実上存在する国々は、それぞれの歴…

栄沢幸二『「大東亜共栄圏」の思想』1995.12

この世に「正しい戦争」というものは存在しないが、だからといって全ての戦争が等しく悲惨で救いがないというわけではない。正しくはないが避けられない戦争というものがあり、また、戦争によって人々が多少はマシな状態になることがあるのも確かだ。戦争が…

竹村民郎・鈴木貞美編『関西モダニズム再考』

関西モダニズム再考作者: 竹村民郎,鈴木貞美出版社/メーカー: 思文閣出版発売日: 2008/02メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る東京中心史観を離れ、明治以降の関西から「近代」を問い直していこうという、比較的漠然とした問題…

片山杜秀『近代日本の右翼思想』

近代日本の右翼思想 (講談社選書メチエ)作者: 片山杜秀出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/09/11メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 210回この商品を含むブログ (43件) を見る日露戦争後から第二次大戦までの右翼思想を包括的に扱おうと試みた、意欲的…

明治国家と平安文化

京都在住4年目にして初めて時代祭に参加した。バイトとしてではあるが、比較的じっくりと見られたので、覚え書き程度に時代祭の歴史的位置づけについて書いておこう。一応まじめに働いていたので、写真は無し。 時代祭というのはそもそも、明治二十八年に行…

「守護領国制論の展開とそれに対する批判」

パソコンの中から2年ほど前に書いた中世国家論研究史のレポートを発掘。永原慶二や網野善彦の話をしたついでに公開してみよう。先回りして言い訳しておくと、私の専門はあくまで近代史なので、過度な期待しない方が良いと思う。 1.はじめに この小論では、…

永原慶二『20世紀日本の歴史学』

20世紀日本の歴史学作者: 永原慶二出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 2003/03/01メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (6件) を見る明治維新から1980年代までの歴史学(主に日本史)の展開を平易な記述で語りなおした名著。最近つまらない本…

終戦と天皇制

八月十五日の神話 終戦記念日のメディア学 ちくま新書 (544)作者: 佐藤卓己出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/07/06メディア: 新書購入: 6人 クリック: 442回この商品を含むブログ (131件) を見る最近『八月十五日の神話』という新書を読んだのだが、こ…

柏木義円「渡瀬氏の『朝鮮教化の急務』を読む」1914.4

柏木義円は同志社出身の牧師で、明治三十一年から38年間に渡って刊行された『上毛教会月報』によってその名を知られている。日本組合教会に所属していたが、同教会が総督府の依頼を受けて朝鮮伝道を始めると、それに強く反対した。以下の引用文は、朝鮮伝道…

沢田謙「都市の反逆」1923.9

沢田謙は戦後、偕成社から伝記シリーズを多数出版した児童文学者である。ただし、戦前にはここで引用するような社会時評的な活動も行っていたことは、現在ではあまり知られていない。昭和期には『ヒットラー伝』『ムッソリーニ伝』とプロパガンダ的なものを…

天皇機関説と国民道徳

世の学生の例に漏れず期末試験対策でちょっと忙しいのだが、そうすると、まったく緊急性の無いことを調べたくなるのが人情というものである。そこで今回は、明治四十五年に雑誌『太陽』に掲載された美濃部達吉「上杉博士の「国体に関する異説」を読む」を通…

『太平洋戦争と新聞』−新聞の変容

太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)作者: 前坂俊之出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/05/11メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (12件) を見るちょっと出来事を調べる分には便利だし、軍民離間問題の話はなかなか興味深いかった…

大日方克己『古代国家と年中行事』

古代国家と年中行事 (講談社学術文庫)作者: 大日方克己出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/02/07メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る主に奈良から平安期を対象として、朝廷によって運営された年中行事の成り立ちと、…

民本主義と普通選挙

今回のテーマは民本主義であるが、主に吉野作造の考えを中心にして議論を展開していこうと思う。 大正五年(1916)の『中央公論』に掲載された論文「憲政の本義を説いて其有終の美を済すの途を論ず」で吉野は、立憲政治の根本精神に「民本主義」の名前を与え、…

学校の二宮金次郎像と社会教育の関係

今でも小学校の片隅に二宮金次郎(尊徳)の銅像を見かけることがある。最近ではすっかり数が減ったとも聞くが、僕が通っていた小学生では当時(十年くらい前)、校庭の片隅に薪を背負って本を読みながら歩く二宮金次郎が立っていて、今でも「勤勉」という言葉を…

寺社参詣と拝観料

拝観料という制度が生まれたのは江戸時代に入ってからのことであるが、ただ、鎌倉時代の後期ごろから一般の拝観者がお賽銭を投げるという制度は存在しており、これが実質的には拝観料の代わりとなっていたと考えられている。 中世史を専攻している知人に聞い…

山本博文『江戸お留守居役の日記』

三代将軍徳川家光から家綱の時代、萩藩(長州藩)江戸屋敷の留守居役として活躍した福岡彦右衛門の日記から、幕府と大名の関わり、そして藩士たちの江戸における生活の実態を描き出した興味深い一冊。これまでにも、幕府の直参である御家人や旗本の江戸生活に…

土地と権力

近代の権力は基本的に人と土地の繋がりを強くする方向に作用する。住所が確定しないと職に就けなかったり、政治に参加出来なかったり。そうしないと徴税と徴兵が出来ない、というのがその主な理由だが、この事実は現代でも第三世界の近代化を考える上で重要…

乃木希典を巡る諸相

伏見のほうに行く機会があったので、ついでに近くの明治天皇陵、乃木神社に寄ってきた。いつ、私がデモクラシィ思想に洗脳された人間であることを見抜かれて「ここに非国民がいるぞ!」と後ろ指さされるか緊張しながらうろうろしていたが、特に何も起こらな…

山県大弐『柳子新論』と革命について

柳子新論 (岩波文庫)作者: 山県大弐出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1989/06メディア: 文庫 クリック: 7回この商品を含むブログ (1件) を見る読了。明和事件で刑死した山県大弐の代表作であり、垂加神道や崎門学派、竹内式部などによって造成された尊王斥…

徳永直『太陽のない街』―労働運動の挫折

太陽のない街 (1950年) (岩波文庫)作者: 徳永直出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1950メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る読了。つまらない作品だろうと覚悟して読んでみたが、意外と読ませる作品だった。台詞、改行がやたらと…

古河財閥について

劇場版『空の境界』が大阪でも上映されることが決まり、東京へ行く必要性が少し減った。ただ、ずいぶん前から行きたい行きたいと思いつつそのままにしている、旧古河邸と東武ワールドスクエアには早い時期に行きたい。前者に関しては、ほんの数週間前にもチ…

高木博志『近代天皇制の文化史的研究』より「初詣の成立」

近代天皇制の文化史的研究―天皇就任儀礼・年中行事・文化財 (歴史科学叢書)作者: 高木博志出版社/メーカー: 校倉書房発売日: 1997/02メディア: ハードカバー クリック: 19回この商品を含むブログ (4件) を見る今回取り上げる「初詣の成立」を含めた本書にお…

金原左門『大正期の政党と国民』

大正期の政党と国民―原敬内閣下の政治過程 (1973年) (塙選書)作者: 金原左門出版社/メーカー: 塙書房発売日: 1973メディア: ? クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る大正期の政党、とあるが、本書が取り扱っているのは原内閣に限られる。平民宰相…