2008-01-01から1年間の記事一覧

若桑みどり『お姫様とジェンダー ―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』

お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門 (ちくま新書)作者: 若桑みどり出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2003/06/01メディア: 新書購入: 4人 クリック: 85回この商品を含むブログ (47件) を見るタイトルに期待して損をした。問題提起とし…

世阿弥『風姿花伝』

風姿花伝 (岩波文庫)作者: 世阿弥,野上豊一郎,西尾実出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1958/10/25メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 39回この商品を含むブログ (77件) を見るもっとがちがちの芸術理論書だと思っていたが実際に読んでみると、一座の行く末…

「永遠の安心感を与えてやろう」

というDIO様の言葉に逆らって、人は自ら不安の中に足を踏み入れる。重要な決断に際して背中を押すのは希望でも楽観でもなく、やけっぱちの狂気だ、と思う。 「弱き旅人よ 引き返すがいい 倒れてしまう前に それでもお前は 行くというのか 遠い空の向こうまで…

吉川幸次郎・三好達治『新唐詩選』

新唐詩選 (岩波新書)作者: 吉川幸次郎,三好達治出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1952/08/10メディア: 新書購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (15件) を見る国語は好きだったが、国語の授業は嫌いだった。要するに人の話を聞くのが退屈だったの…

樋口一葉『たけくらべ/にごりえ』

にごりえ・たけくらべ (岩波文庫 緑25-1)作者: 樋口一葉出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1999/05/17メディア: 文庫 クリック: 34回この商品を含むブログ (39件) を見る近所の古本屋にて、一冊50円で購入。 大変に格調高い文章で、ワンセンテンスが非常に長…

「桃太郎」と鬼について

日本童話宝石集(二)日本の神話と十大昔話 (講談社学術文庫)作者: 楠山正雄出版社/メーカー: 講談社発売日: 1983/05メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る「かちかち山」が記憶していたよりもずっとグロくて驚いたよ。という話はさておき、今回は…

スティーブン・スピルバーグ監督『ジョーズ』

ハリウッド映画で「最後の敵」の死に方は、「爆発」「転落」「激突」にパターン化されていて、雑魚のように撃ち殺されることはない(あったとしても例外的)。銃社会という現実に対する、アメリカ人の屈折したマッチョイズムが現れているような気がする。 『イ…

トラウマ

最近は本来の意味を外れ、単に「嫌な出来事」「ことあるごとに思い出してしまう記憶」くらいの軽い意味で用いられることが多い。過去のある出来事が現在のこれこれな状態を形成している、というわかりやすさ、単純さが、人に「トラウマ」という言葉を使わし…

寺社参詣と拝観料

拝観料という制度が生まれたのは江戸時代に入ってからのことであるが、ただ、鎌倉時代の後期ごろから一般の拝観者がお賽銭を投げるという制度は存在しており、これが実質的には拝観料の代わりとなっていたと考えられている。 中世史を専攻している知人に聞い…

武者小路実篤『友情』

主人公は杉子という女性を好きになるが、彼女は主人公の友人である大宮のことが好きで、大宮は友情と愛情の板ばさみで苦しむ、という話。大宮くん良い人すぎ。 武者小路実篤という作家は「自分の文学の出発点はトルストイだった」としながらも、トルストイの…

山本博文『江戸お留守居役の日記』

三代将軍徳川家光から家綱の時代、萩藩(長州藩)江戸屋敷の留守居役として活躍した福岡彦右衛門の日記から、幕府と大名の関わり、そして藩士たちの江戸における生活の実態を描き出した興味深い一冊。これまでにも、幕府の直参である御家人や旗本の江戸生活に…

河鍋暁斎について−京都国立博物館「没後120年記念 絵画の冒険者 暁斎 Kyosai−近代へ架ける橋−」展によせて−

神仏分離に始まる日本社会の「近代化」において宗教に与えられた役割は、自らをキリスト教や社会主義への防波堤になぞらえ、人民を天皇制国家における忠良な臣民に教育することであった。仏教は教義の合理性を強調し、国家の教化政策の側に組み入れられるこ…

『啄木詩集』

啄木の詩はぐさぐさと胸を突き刺すようなシャープさと、思わずにやりとさせられる卑俗さがあって素敵です。 「何となく汽車に乗りたく思いひしのみ 汽車を下りしに ゆくところなし」 なんてスピード感のある詩もあれば、 「ふるさとを出で来し子等の 相会ひ…

『反哲学史』

哲学のわかりづらい2つの点、つまり「この哲学者は、その前の哲学者と比べてどう違うのか」と「この哲学者の考えは社会にどう反映されたのか」をわかりやすく解説した良書。僕もあまり哲学が得意じゃないので大いに勉強になりました。 一応は同じ著者の『現…

『ジャズ大名』

筒井康隆原作、岡本喜八監督作品。原作を読んだのはもう何年も前の話ですが、作中に登場する黒人が適当に演奏した曲を「のちのメイプル・リーフ・ラグである」なんていう風にしれっと書く脱力感が印象的な作品です。 幕末を舞台に、漂着した黒人の奏でるジャ…

『エクソシスト』

今までに何度も見ている作品ですが、さすがに立派な映画。 物語全体をキリストの受難、そしてキリスト教が古代の神々を追放していく過程の追体験として読むことが出来る、という点については説明を要しないでしょう。イラクの悪魔がわざわざアメリカの少女に…

『死霊の盆踊り』

エド・ウッドが脚本を書き、その友人がメガホンを取ったというこの作品。俳優がカンペ読んでいるのがバレバレだったり、夜のシーンがいきなり昼になったり、崖から車に乗ったまま転落したはずなのに無傷だったり(そもそも車は何処にいった)、内容はと言えば…

今回は日記らしく、最近見た映画や読んだ本の話。

歴史の物語り論−「開かれた未来」からの歴史認識の可能性について

1980年代のドイツで起こった「歴史家論争」の渦中、感傷的な筆致によって第二次大戦中のドイツ軍との心情的同一化、ひいては彼らの行った歴史的事実の正当化を試みたアンドレス・ヒルグルーバーに対し、ユルゲン・ハーバーマスは以下のような批判を加えた。 …

大正と大正天皇、それと狂気について

前回の終わりに夢野久作の名前を出したが、今回の導入としてその話を少し。 代表作『ドグラ・マグラ』が書き下ろされたのは昭和10年1月のこと。しかし、初稿にあたる『狂人の解放治療』は大正15年に書かれており、作者によるとその構想はさらにそれ以前へと…

最近見た映画

悪魔のいけにえ スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]出版社/メーカー: video maker(VC/DAS)(D)発売日: 2007/06/08メディア: DVD クリック: 20回この商品を含むブログ (29件) を見るうっかり夜中に見たせいで寝れなくなってしまった。怖いよう。ううう。な…

明治と明治天皇

ミカド―日本の内なる力 (岩波文庫)作者: W.E.グリフィス,亀井俊介出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1995/06/16メディア: 文庫 クリック: 5回この商品を含むブログ (5件) を見るW.E.グリフィス『ミカド』を読了。面白かった。グリフィスが日本を褒めるのは、…

『日本共産党』について

日本共産党 (新潮新書)作者: 筆坂秀世出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/04/15メディア: 新書購入: 1人 クリック: 152回この商品を含むブログ (105件) を見る読了。本書においては「議論を尽くす」という建前の民主集中制が形骸化し、現実にはトップの意…

丸山思想史とムラの話

メインブログで書いた丸山真男と「実感信仰」について少しだけ補足。 丸山真男に象徴される「近代主義」思想家たちにとってムラは前近代の封建的村落共同体の要素を強く残したものであり、それゆえに天皇制、ひいては天皇制ファシズムの温床として否定的に評…

土地と権力

近代の権力は基本的に人と土地の繋がりを強くする方向に作用する。住所が確定しないと職に就けなかったり、政治に参加出来なかったり。そうしないと徴税と徴兵が出来ない、というのがその主な理由だが、この事実は現代でも第三世界の近代化を考える上で重要…

乃木希典を巡る諸相

伏見のほうに行く機会があったので、ついでに近くの明治天皇陵、乃木神社に寄ってきた。いつ、私がデモクラシィ思想に洗脳された人間であることを見抜かれて「ここに非国民がいるぞ!」と後ろ指さされるか緊張しながらうろうろしていたが、特に何も起こらな…

山県大弐『柳子新論』と革命について

柳子新論 (岩波文庫)作者: 山県大弐出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1989/06メディア: 文庫 クリック: 7回この商品を含むブログ (1件) を見る読了。明和事件で刑死した山県大弐の代表作であり、垂加神道や崎門学派、竹内式部などによって造成された尊王斥…

徳永直『太陽のない街』―労働運動の挫折

太陽のない街 (1950年) (岩波文庫)作者: 徳永直出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1950メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る読了。つまらない作品だろうと覚悟して読んでみたが、意外と読ませる作品だった。台詞、改行がやたらと…

『プラン9・フロム・アウタースペース』『エド・ウッド』

何のためらいもなく「駄作」だと言い切ることの出来る映画というのは、実はそれほど多くないように思う。僕には理解できないだけで、全く新しい映像文法が使われているのではないか。「つまらない映画を見た」と感じたときはいつもそんな思いが頭をよぎる。…

古河財閥について

劇場版『空の境界』が大阪でも上映されることが決まり、東京へ行く必要性が少し減った。ただ、ずいぶん前から行きたい行きたいと思いつつそのままにしている、旧古河邸と東武ワールドスクエアには早い時期に行きたい。前者に関しては、ほんの数週間前にもチ…